Webサイトを中国語で制作する際に考慮すべき中国語には、主に「簡体字(かんたいじ)」と「繁体字(はんたいじ)」の2種類があります。これらは使用される地域や文化的背景が異なります。

1. 簡体字 (Simplified Chinese)

  • 特徴: 繁体字を簡略化した文字体系です。画数が少なく、覚えやすく書きやすいように工夫されています。
  • 主な使用地域: 中国本土(中華人民共和国)、シンガポール、マレーシアなど。
  • 言語コード: zh-CN (中国本土)、zh-SG (シンガポール) などが一般的に使用されます。

2. 繁体字 (Traditional Chinese)

  • 特徴: 伝統的な画数の多い漢字です。歴史的な文献や書道などで用いられてきた字体です。
  • 主な使用地域: 台湾、香港、マカオなど。海外の華人コミュニティの一部でも使用されます。
  • 言語コード: zh-TW (台湾)、zh-HK (香港) などが一般的に使用されます。

主な違い

特徴簡体字 (Simplified Chinese)繁体字 (Traditional Chinese)
文字画数が少なく簡略化されている伝統的で画数が多い
主な使用地域中国本土、シンガポール、マレーシア台湾、香港、マカオ
歴史的経緯20世紀半ばに中国政府によって識字率向上のために制定古くから使われている伝統的な字体
文化的ニュアンス実用的、効率的伝統的、文化的、格調高い
国 (国), 龙 (龍), 电 (電)國 (国), 龍 (龍), 電 (電)

優先順位について

Webサイトのターゲット層によって優先順位は大きく変わります。

  • 中国本土のユーザーを主なターゲットとする場合: 簡体字を優先します。これが最も広範囲のユーザーにリーチできる選択です。
  • 台湾、香港、マカオのユーザーを主なターゲットとする場合: 繁体字を優先します。これらの地域のユーザーは繁体字に慣れ親しんでいます。
  • 両方の地域のユーザーにアプローチしたい場合:
    • リソースに余裕があれば、両方のバージョンを提供するのが理想的です。 これにより、各地域のユーザーにとって最も自然な形で情報を提供できます。多くのグローバル企業がこのアプローチを取っています。
    • どちらか一方を選ぶ必要がある場合: ターゲットとする市場規模やビジネス戦略に基づいて判断します。一般的には中国本土の市場規模が大きいため、簡体字が優先される傾向にありますが、製品やサービスによっては繁体字圏のユーザーが重要な場合もあります。

言語について知っておくべきこと

  • 方言の違い: 中国語には北京語(普通話)、広東語、上海語、台湾語など、多くの方言が存在します。書き言葉としては簡体字または繁体字が標準として使われますが、話し言葉は地域によって大きく異なります。Webサイトのコンテンツが音声や動画を含む場合は、ターゲット地域の方言も考慮に入れる必要があるかもしれません。ただし、通常、書き言葉のWebサイトでは標準中国語(普通話)に基づいた簡体字または繁体字で対応します。
  • 単語や表現の違い: 同じ意味でも、簡体字圏と繁体字圏では使われる単語や表現が異なることがあります。例えば、「タクシー」は中国本土では「出租车 (chūzūchē)」、台湾では「計程車 (jìchéngchē)」と言います。ローカライズの際には、単に文字を変換するだけでなく、こうした表現の違いにも注意が必要です。
  • 技術的な注意点:
    • 文字コード: UTF-8 を使用することが一般的です。これにより、簡体字と繁体字の両方を正しく表示できます。
    • フォント: ターゲットユーザーが適切なフォントをインストールしていない可能性も考慮し、Webフォントの使用や、一般的なOSに搭載されているフォントを指定することを検討しましょう。簡体字と繁体字では推奨されるフォントファミリーも異なります。
    • 言語切り替え機能: 複数の言語バージョンを提供する場合は、ユーザーが簡単に言語を切り替えられるように、わかりやすい場所に言語スイッチャーを設置することが重要です。
  • 文化的背景の理解: 文字だけでなく、色使い、デザイン、コンテンツのトーンなども、ターゲットとする地域の文化的背景や嗜好に合わせることが、より効果的なWebサイト制作につながります。

まとめ

Webサイトを中国語対応にする場合、ターゲットオーディエンスを明確にすることが最も重要です。その上で、簡体字と繁体字のどちらを優先するか、あるいは両方に対応するかを決定し、それぞれの言語的・文化的なニュアンスを理解してコンテンツを作成することが成功の鍵となります。